#47 アスファルトの虎になれ


 姉をホテルに送り届けた後、キミはポケットの中の1万円札を握りしめた。
「スキャンダルは金になる……!」
 キミの顔に不敵な笑みが浮かんだ。
 キミは、アイドルタレントにもらった金でカメラと高感度フィルムを買った。それを持ってホテルに潜み、そのアイドル・タレントが姉の部屋にくるのを待った。
 部屋に入るとき、部屋から出てきたとき、キミはシャッターを押した。
 写真ができあがると、アイドルタレントを送り出す姉の顔が、ドアの中に写っていた。キミは、その写真を、アイドルタレントの事務所に送りつけた。もちろん、アイドルタレントとアダルトビデオの女優の密会をばらされたくなかったら、口止め料をよこせという手紙を添えて。
 レースには金がかかる。金がなければ、いいマシンは手に入らない。どんな方法でもかまわない。金を手に入れるのだ。キミは、愛読している大薮春彦の「アスファルトの虎」の主人公になろうと決意した。
 電話で連絡をとり、現金の受け渡しをすることになった。深夜の晴海埠頭を指定した。ふと、姉と母の顔が脳裏をかすめた。
「モナコには、ぼくもいくんだ……」
 埠頭の倉庫の陰に身を隠したキミは、マネージャーの車が止まるのを見た。すぐに出て行くべきか。それとも、少し様子を見ようか……。キミは、一瞬ためらった。

 1.すぐに出ていく
 2.様子を見る