#57 様子を見ていたら……


 グイッ! 倉庫の陰からマネージャーの様子を見ていたキミの背中に、硬いものが押しつけられた。拳銃だった。脇の下を冷や汗が流れ落ちた。
「小僧、お前か。ふざけた真似をしたのは……」
 どう見ても暴力団員だった。
「声を出すんじゃねえ。おとなしくついてきな」
 男の言われるままにキミは歩いた。
 岸壁にクルーザーが停泊していた。そこに男の仲間が待っていた。
「そこに入れ」
 拳銃で背中を押され、キミは、クルーザーの甲板にあったドラム缶の中に突き落とされた。中には、柔らかいコンクリートが詰まっていた。キミの両足は、ズブズブとコンクリートの中に埋まっていった。
 −−3日後。
 キミは、東京湾の海底にいた。下半身をドラム缶のコンクリートで固められ、上半身だけが、ゆらりゆらりと揺れている。すでに朽ちかけたキミの眼球を、小魚たちがつついていた。

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