すがやみつるのデジタルマンガことはじめ(2-2)

『こんにちはマイコン』で漫画賞!
『こんにちはマイコン』の企画書は、この本に掲載されています。興味のある方は、ご覧になってみてください。無料です。
『漫画で億万長者になろう!』を読む

 当時は、パソコンは持っていたものの、半角カタカナしか使えなかったので、文章の原稿や企画書を書くときには、原稿用紙や鉛筆、万年筆を使うアナログ方式でした。

 ちょうど『ゲームセンターあらし』のテレビアニメが開始されるタイミングでもあり、『あらし』のキャラクターを使ったマイコン(パソコン)入門書にしたいと考えました。コンピューターの仕組みとBASICによるプログラミング入門が、マンガでわかる本です。

 この企画書を「コロコロコミック」編集部に持ち込みましたが、最初は、まさにケンもホロロの状態でした。「何、それ?」みたいな感じです。

 まるで無視されたような状態がつづいたので、シビレを切らした私は、「なら、この企画、アスキーに持っていきます」と、少し強硬に申し出ました。早く出さないと、どこかほかからマンガ版のパソコン入門書が出てくるかもしれなかったからです。

 こちらの熱意に根負けしたのか、編集長が、関連書籍の売り上げを調べてくれました。NHK教育テレビ(当時)で放映されていたマイコン入門番組のテキストが30万部、テレビ東京でシャープが提供していた「パソコンサンデー」のテキストが18万部(だったと記憶しています)も売れていたことから、「2~3万部くらいは行けるんじゃないか」ということで、ようやく許可が出ました。

『ゲームセンターあらし』のコミックスは、テレビアニメの放映もあって、初版が30万部になっていた頃なので、「コロコロコミック」編集部としたら、描き下ろしで数万部の学習マンガよりも、『ゲームセンターあらし』の方をたくさん描いてほしかったのだと思います。

 執筆に取りかかったのは1982年の夏。6月にルマン24時間レースに行ったことで、気分もかなりリフレッシュされていたときでした。

『こんにちはマイコン』が出るのは10月ですが(奥付では1982年11月1日)、この前に、テレビアニメ『ゲームセンターあらし』の放映に合わせて『ゲームセンターあらし全百科』という小型で分厚い「あらし」のガイドブックが出版されました。

『ゲームセンターあらし全百科』より
(写真クリックで拡大します)







 この本のグラビアページには『こんにちはマイコン』執筆のために2台購入したNECのPC-6001を触る私が、写真で紹介されています。さらに、このページには、画像を入力するための「タッチパネル」も写っています。デジタイザーともいいましたが、いまのタブレット(板タブ)になるのでしょうか。

 それまでパソコンでゲームを楽しんでもいましたが、パソコンでマンガを描く発想はありませんでした。自分で作るプログラムといえば、確定申告の計算、福利のローン計算(家を買ったばかりでした)、給与計算……と、事務の合理化をめざすものばかりだったからです。

 パソコン雑誌に掲載されているゲームのプログラムを打ち込み、プレイしてもいましたが、「スタートレック」もどきやら「オセロ」もどきのゲームをつくるくらいでした。ゲームは自作するものでなく、他人がつくったものを楽しむものだと思っていました。

 そんなときタッチパネルに出会ったわけですが、解像度も荒く(320ドットくらいだったかな?)、プリントしてもドットが目立って、とてもマンガの原稿には使えません。それでもコンピューターの技術革新は、ドッグイヤーといわれるほどに速いので、やがて解像度も上がり、マンガの仕事に使えるのでは……と想像することはできました。

 タッチパネルで描いた「あらし」の絵に色をつけたものが、『こんにちはマイコン』の裏表紙に使われていますが、この頃は、画面をダイレクトに印刷にまわす方法などなく、モニターの画面をカメラで撮影し、ポジフィルムを原稿にしていました。

 パソコンでマンガの作画をしようと思ったら、次の2つの方法が考えられます。

  1. 手描きの原稿をスキャンしてコンピューターに取り込む
  2. タブレットなどを使ってコンピューターで直接作画する

 そして、さらに夢想していることがありました。それは、以下の2つです。

  1. マンガの原稿を出版社に「電送」する
  2. マンガを電話回線などを使って読者に直接とどける

 これらの実現に向けたトライ&エラーの歴史は、涙なしには語れません(;_;)。本日は時間がないので、ここまで。つづきをお待ちください。

〈つづく〉