#68 名車テンロフ号


 それは、古似倉が組み立てたジムカーナ専用マシン、「テンロフ号」だった。スズキ・フロンテを前後反対にした、後輪駆動、後輪操舵の変なマシンだった。
 キミと古似倉は、そのテンロフ号をトラックに積んで、富士山麓・日本ランドのジムカーナ場で開催されたジムカーナに参加した。
「ここで優勝したら、F3のめんどうをみてやろう」
 古似倉に言われて、キミはテンロフ号に乗り込んだ。
 後輪操舵のマシンは、最初のうちこそ、操縦にコツが必要だったが、慣れてくると、面白いように曲がってくれた。コースのパイロンをかすめ、スピードアップ。ついにキミは、優勝を飾ってしまった。
「これでF3のメンテをやってもらえますね」
「しかたないな、約束だから」
 自分の作ったマシンが優勝してご機嫌な古似倉が、笑顔で答えた。
「ちょっと待ったあッ!」
 そこに男の声が聞こえてきた。

 1.続く