#69 後輪駆動のエキスパート
「キミのその腕、私に預けないか?」
そこに飛び出してきたのは、貫禄たっぷりの初老の男だった。男は名刺を出した。
「小杉フォークリフト?」
名刺の会社名を読んで、キミは首を傾げた。「なんで、フォークリフトの会社の人が、ぼくの腕を?」
「ははーん。テンロフ号のコントロールを見たのか」
古似倉が言った。
「その通り。フォークリフトも、このマシンと同じ後輪駆動。しかし、いま、フォークリフトなどを必要とする工事現場や倉庫では、人材不足で困っている。キミなら、フォークリフトのインストラクターになれる。ぜひ、その腕を、私の会社のためにふるってもらいたい」
「駄目だよ。こっちは、F1目指してレースをするんだから」
「だったら、キミがF1にいくまで、私の会社で経済的なめんどうを見よう」
「ええっ?」
思わぬ話の成りゆきに、キミも古似倉も目を丸くした。
1.続く