#66 白旗はスローダウン


 アクセルをゆるめると、目の前に救急車が現れた。クラッシュしたマシンに乗っていたドライバーを運んでいるらしい。
 怪我は大丈夫なんだろうか? キミは、つい救急車に気をとられてしまった。
 はっ、と気がついたときには、目の前に次のコーナーが迫っていた。
 あわててステアリングを切ったが、もう、間に合わなかった。
 キミのマシンは、コーナー縁石に乗り上げてバウンドすると、裏返しにひっくり返ってしまった。
「クククク」
 やっとの思いでマシンから這い出すと、土手の上から女の子の笑い声が聞こえた。
「コースくらい覚えておきなさいよ」
 土手の上で見ていた女の子が言った。
「なんだ、お前は?」
 それが、キミと、さちこの出会いだった。

 1.続く