#58 日本に残る
家族はアメリカに旅だった。キミは日本に残り、レースをすることになった。
資金は父親が残していってくれた。キミはライセンスを取得すると、即座にF3のマシンを買った。カートからいきなりF3にいってもおかしくはない。あの鈴木亜久里もそうだったのだ。
次に、メンテナンスを依頼するガレージを探すことになった。だが、空前のモータースポーツ・ブームで、どこのガレージも手一杯だった。訪ねた先のガレージで、キミは一軒の自動車修理工場を紹介された。そこの主人は、いまはレース界から身を引いているが、腕は確かだという。キミは、ワラにもすがる思いで、その工場を訪ねた。
「カトレア・モータース」の主人は古似倉といい、人なつこい笑顔でキミを迎えてくれた。
「F3をやりたいんだって?」
はい、とキミが返事をすると、その主人は、その前に、キミの腕を見たいといった。
「このマシンをコントロールできたら、お前のF3のめんどうをみてやろう」
ガバッ! 古似倉は、工場の片隅のシートをめくった。
そこには、異様なスタイルのマシンがあった。
1.続く