#39 姉の恋人


 ドアを開けて入ってきたのは、女の子に人気の男性アイドルタレントだった。どうやら姉の恋人らしい。
「あら、いらっしゃい。でも、誰にも見つからなかった?」
 どうやら母も公認の恋人らしい。
「AV出身の女優と付き合ってるのがばれたら、あなたも困るでしょうに」
 そういいながら、母はまんざらではなさそうだ。
「事務所がうるさくて困るんだけどね」
 そう言うと、アイドルタレントは姉を連れて出ていった。
「フン、何さ、きどちゃって」
 母は、二人が出ていったドアに向かって舌を出した。
「あちらは交際がばれたら困るけど、こっちは、AV出身だから、どうってことないのが強みね。これをネタに、あいつの事務所に話をつけて、もっといい仕事を回してもらえるようにするのよ」
 母は、たくましいマネージャーに変身していた。
 キミは悲しかった。ぼくのせいで、母と姉がこんなになってしまったんだ。
 キミは、部屋のドアを開けて出ていこうとした。
 そこに、いま出ていったばかりの姉と、その恋人が駆け込んできた。
「FFのカメラマンが張り込んでいるのよ」
 姉が声を上げた。

 1.続く