#32 なぜアメリカへ?


「いま、中東の政情不安で、一歩間違えば、再びオイルショックがやってくる。そうしたら、ガソリンをバカ食いする自動車のレースもペシャンコになってしまうだろう。
また地球環境の保護のために、車の燃費や排気ガスに厳しい目が注ぎ込まれ始めている。いずれにしろ、レースなどに対する目が厳しくなるのは確実だ」
 父が説明した。
「その後、気になって、レースに関する本や雑誌を読み漁ったが、ベネトンチームのジョン・ナーナードというエンジニアが、F1も地球の環境保護を考慮して、ターボ時代のように燃費規制すべきだと言い始めた。これは、非力なフォードV8エンジンを使うベネトンを有利にするための発言だとされているが、そうとばかりはいいきれない。フォードはGMと共にロビー活動を展開して、アメリカ政府が決定しようとしていた厳しい大気浄化法案を、やわらげることに成功したばかりだが、それも一時しのぎにしかならないことを知っている」
「それとアメリカにいくのと、どんな関係が?」
 キミは父の言葉に口を挟んだ。
「まあ、ゆっくり聞きなさい」
 父がキミを制した。

 1.続く