#30 涙を吹き飛ばせ
ガシッ!
北縞が鼻血を吹いて畳の上に吹っ飛んだ。
「この野郎、何しやがるんだ!」
テレビのコードを引き抜いたキミの背中に北縞が反撃してきた。喧嘩慣れしているらしく、パンチと蹴りを有効に決めてくる。キミは身体を丸めて、殴られ、蹴られるままになっていた。
「こんな痛み、姉さんの心の傷の痛みに比べたら……」
キミは涙を浮かべながら、耐えていた。
一瞬、何が起こったのかわからず、呆然としていたブッチギリの主人や他のメンバーたちが、二人を引きはがした。殴りかかった理由を訊かれても、キミは口をつぐんでいた。
こんな最悪の状態で、キミは翌日のレースに臨むことになった。
1.続く