#34 涙のカートレース


「何がなんでも勝つ! 勝って勝って勝ち抜いて、必ずF1までステップしてやる!」
 キミは涙を流しながら走った。
 これまで全開で抜けられなかったコーナーも、アクセルを踏みっぱなしでクリアした。マシンが横になったが、それもコントロールして立て直した。
「違う。昨日までのあいつとは違う……」
 北縞が声を上げた。「何があったんだ、あいつ……?」
 北縞は、その原因が自分にあるとは思いもしなかった。
 このレースをきっかけに、キミは連戦連勝を重ねた。18歳になると同時に、F3のを走らせているチームから声がかかった。A級ライセンスを取得すると同時に、そのチームが持っているFJ1600でレースをさせてくれるというのだ。
 ついにF1へのステップを一つ駆け抜けたんだ。キミは喜んで、そのことを報告するために、家に戻った。
 しかし、そこには誰もいなかった……。

 1.続く