#29 俺は鬼だ!


 テレビに映し出されたのは、アダルトビデオだった。北縞が2チャンネルを選んだのだ。
「どうしたんだよ? 高校生にもなって、こんなのにビックリしてるのか?」
 キミは画面から目をそらせた。その画面に映っていたのは姉だったのだ。
 俺のレース資金を作るために、姉は、こんなことまでしていたんだ……。キミは、ぎゅっと目を閉じた。だが、目を閉じると、テレビのあえぎ声が増幅されて聞こえてくる。
「やめてくれよ!」
 キミは両耳をふさいで声を上げた。
「あれま、純情ぶっちゃって。こんなのレンタルショップでいくらでも借りられるのに」
 北縞がテレビのボリュームを上げた。
「やめろーーーッ!」
 キミは、叫ぶよりも早く、パンチを繰り出していた。

 1.続く