#25 父帰る
キミは母の手を払いのけた。
「やめよう! こんな生活、もうたくさんだ! ぼくのために家がメチャメチャになるなんて! F1チャンピオンになんかなれなくてもいい! 元に戻ろうよ、母さん、姉さん!」
キミは叫んだ。
「その通りだ」
背後から声が聞こえた。父が立っていた。
「どうしたの、その格好……」
母が目を丸くする。それもそのはずだった。父は、これまでとは違い、イタリア製らしい高級スーツに身を包み、髪型も、これまでの父とは違う、スタイリッシュなものになっていた。
「お父さん、素敵……。でもどうしたの?」
姉も父の姿に目をみはっている。
1.続く