#16 母の執念


 ガラッ!
 母は、突然、押入を開けて、中から何か取り出した。
「な、なんだ、それは?」
 キミは、その異様なものを見て、思わず後ずさりした。何本ものスプリング、鉄の輪。
「だ、大リーグ養成ギブス……?」
 キミは、あの名作野球マンガを思い出して、つぶやいた。
「そう、よくわかったわね。でも、これは大リーグ養成ギブスではないわ。あなたの首を、身体を、コーナリングのときの横Gに負けないように鍛えるための、F1パイロット養成ギブスよっ!」
 母は、いつのまにか、F1に関する本を読みあさり、知識を仕入れていた。その表情は、どこか鬼気せまっている。
「さぁ……」
 母がF1パイロット養成ギブスを持って近づいてきた。その迫力に、キミの身体は動かなくなっていた。

 1.続く