#12 世界に通じるバカになれ
ガックリしているキミのところに、ブッチギリの主人がやってきた。ニヤニヤと笑っている。
「どうだ、カートのパワーがわかっただろう。オモチャみたいなマシンでも、これは本物のレースをするマシンなんだ」
「うん……」
キミは力なく返事をした。
「修理は無料でやってやるから心配するな。そのかわり、来週も練習にこい」
主人が笑顔で言う。
「え、タダで修理を?」
「ああ。お前のように、いきなりアクセルを踏みつけるバカは少ない。最初は誰でも、おそるおそるアクセルを開けていくものさ。でも、そんな性格じゃレースには勝てない。いや、日本の中では勝てても、世界に通じる選手にはなれない。バカじゃないと一流にはなれないのさ」
キミは、ほめられているのか、けなされているのか、よくわからなくて戸惑った。
でも、主人の顔を見ていると、けなされているわけではなさそうだ。少しほっとしながらキミはヘルメットの上から頭をかいた。
1.続く