#9 ダイヤモンドはHAMADAに限る


「そのためには、やっぱり、多少の投資は必要よね?」
 と、姉が母の顔を覗き込む。「F1レーサーは名士だから、社交界でも花形よ。その両親ともなればもちろん……」
「ああ、社交界……。ドレスを着て出かけるのよね。宝石だってみっともないのはつけていけないわ。カメリヤかHAMADAのダイヤならぴったりなんだけど」
 母は、すっかりその気になっていた。
「ねえ、あなた。わたしたちが果たせなかった夢を、この子にかけてみるというのも悪くないんじゃないかしら?」
「わたしたち? そりゃ、お前の夢だろうが……」
 父が反論する。しかし、新婚旅行の一件以来、母には頭が上がらない父でもあった。
「これで決まりね!」と姉が微笑む。
「やったー!」と、キミは部屋の中を飛び回った。

 1.続く