#8 我が青春のモナコ


「モナコには一度いきたいと思ってたのよ。その夢を新婚旅行でかなえてくれるという約束で結婚したのに、いざそのときになったら、熱海になってしまったのよ、パパったら。『ここも東洋のモナコ』だなんてごまかして」
「そ、それは……」
 きっと睨んだ母の顔を見て、父がたじろいだ。
「熱海が東洋のモナコでも、熱海じゃF1はやってないじゃないか」
 キミが言うと、「そうよ。グレース・ケリーもいなければ、クルーザーが浮かぶ青い海もカジノもないわ。ああ、青春の夢だったモナコよ……」
 母の目は遠い青春の日を思い出していた。
「そうよ、そのモナコにいけるのよ。F1レーサーになってモナコに住めば、きっと家族を呼んでくれるわよね?」
「あったりまえだろ」
 助け船を出してくれた姉に感謝しながら、キミは答えた。

 さらに1.続く