#7 不良になってやる!


「もういいもんね。不良になってやる! チャリンコで暴走族してやる!」
 キミの脅迫に両親は青ざめた。
「バカなことを言うのはやめなさい」
 父が怒鳴った。
「やめないよ! 何がなんでもF1パイロットになるんだ。その第一歩のカートができないんだったら、こんな家にいてもしょうがねーや!」
「がんばれ、わたしも応援するわ!」
 そう声をかけてきたのは、ちょうど家に帰ってきた姉だった。
「お前まで……」
 母がおろおろした。
「二人とも、自分の息子を、当たり前のサラリーマンにするつもりなの? F1のレーサーのほうが、よっぽど夢があるじゃないの。F1レーサーといったら、毎年、何億ものお金を稼いで、モナコあたりに住むことだってできるのよ」
 姉は、最近増えている女性雑誌の特集で、F1の選手の暮らしぶりなどを知ったらしい。ミーハー的知識だけは豊富だった。
「毎年、何億も……? それにモナコに住めるの?」
 母の目が輝いた。

 1.続く