• 表紙へもどる

  • 2002年11月中旬の日記

    11日 12日 13日 14日 15日 16日 17日 18日 19日 20日

    11月11日(月) パソコン修理と『たそがれ清兵衛』

     午後、南青山の日本推理作家協会事務局へ。先週、理事の今野敏さんから、事務局に入ったパソコンが動かないとSOSがあり、今日、その原因を探ることになったもの。パソコンは二階堂黎人さんから寄贈されたものだが、内蔵のSCSIボードが認識されないらしい。事務局に出かけ、今野さんの説明を聞きながらパソコンを開き、あれこれチェック。SCSIカードは認識されているものの、デバイスドライバに「!」がついて動かない状態。
     こういうときはネットで検索するに限ると、念のために持参したノートパソコンとPHSを使ってインターネットに接続しようとすると、あれれ、ダイヤルアップ接続の設定が消えてしまっている。新たに作成しようとしても不可能。何か壊れてしまったらしい。しかたなく事務職のデスクトップPCでSCSIカードのメーカー「メルコ」のサイトにつなぐが、最新のデバイスドライバがあるだけで、とくに情報はなし。
     パソコンと内蔵カードでは、よく「相性」というパソコンらしからぬ問題が発生する。そのほかにカードを差し込む順番が悪いと認識されないこともある。とりあえず、すでに内蔵されているビデオカードと入れ替えると、あれれ、CD-ROMドライブが消えてしまった。ビデオカードを元に戻し、とりあえず不要のEthernetカードを抜いた場所にSCSIカードを入れると、あれれ、こんどは認識された。MOドライブもドライバを入れて認識され、無事に作業完了。ここまで2時間弱の作業。本当は4〜5時間は覚悟していたのだが。
     というわけで今野さんと渋谷で別れ、京王井の頭線で吉祥寺へ。考えてみたら昼前に起きてから何も食べていなかったので、とりあえず立ち食いそば店でコロッケそば。書店で資料になりそうな本を購入し、帰宅しようと思ったが、夕方でバスが混んでいる。そこで、ふと思い立って、映画館の吉祥寺セントラルに飛び込み『たそがれ清兵衛』を見てしまう。早く見ておかないと終了してしまうのでは……という予感があったからだが、映画館に入ると、やはり観客は、ぼくも含めて10人弱。いい映画なのになあ。とりわけ宮沢りえがいい。『雨あがる』などの黒澤明系映画よりも、ずっといい。中年以上のオジサンたちに映画の内容が伝わるまでには時間がかかるのかも。ただし、これで1,800円というのは高いという気がしないでもない。1,000〜1,200円円くらいなら、もっと観客が入るのではないかなあ……。あ、1,800円なら、『釣りバカ日誌』と2本立てにしてくれ。これならお客が入るかも。
     帰宅後、ノートパソコンでダイヤルアップ接続ができない件をチェックしたら、以前、Windows XPのSP1をインストールして、不調だったためアンインストールしたことがあったのが原因だった。パナソニックのサイトで情報を発見し、リンクされていたマイクロソフトのサポート技術情報で対処法を読んでレジストリを変更。これで修復することができた。

     今日、買った本。

    『発明超人ニコラ・テスラ』(新戸雅章/ちくま文庫/1997年3月刊/880円+税)

     途中まで執筆したまま放置中の「電力ホラー小説(?)」の参考資料。ニコラ・テスラはオウム事件でオカルト科学者、マッドサイエンティストとして有名になってしまったが、交流送電システムを考案するなど、まともな研究(?)も多い。『サイボーグ009』にも出てきましたな、そういえば。

    『浅草―土地の記憶』(山田太一[編]/岩波現代文庫/2000年1月刊/900円+税)
     ぼくの母が通っていた戦前、戦中の浅草について、あれこれ調べているもので。

    『始祖鳥記』(飯島和一/小学館文庫/2002年12月(奥付)刊/695円+税)
     単行本のときに読もうと思って読み損ねていたら、もう文庫になってしまった。江戸時代、日本人として初めて空を飛んだ「鳥人・幸吉」の物語。

    11月12日(火) 仕事に専念

     仕事が立て込むとイライラして、つい耳かきで耳垢とりをしてしまうのだが、どうやら耳かきの度が過ぎた上に、水泳をしていたせいで、外耳炎になってしまたらしい。耳鼻科に医院に出かけると臨時休業。しかたなしに薬局に出かけて相談すると、外傷薬を塗ってみたらと薦められる。耳鼻科でも軽度の炎症や傷には、この薬を使うらしい。これでダメなら耳鼻科に行って治療を受けてほしいとのこと。症状がひどいと抗生物質を使うらしい。とりあえず帰宅して外傷の薬を綿棒で塗布。
     夕方まで仕事に専念した後は歯医者で治療。帰途、ハンバーガー店に寄って原稿。夕食のため、いちど家に戻る途中、古書店で資料探し。昔の本を5冊ほど購入して帰宅。夕食後、自宅で仕事をするが能率が悪いためイライライラ。これが耳かきの原因でもあったんだよな。というわけで、ええいとばかりに午前零時を過ぎてからファミレスへ出撃。シコシコと原稿を進め、午前3時過ぎに帰宅。

    11月13日(水) 『ホンダ式』

     昨夜、だいぶ勢いがついたので、今日は自宅で仕事。途中、会社の決算書類を作成する。今期は仕事ができる環境ではなかったので、収入は大幅ダウン。さらに喪中ハガキの準備。
     仕事に戻るも中部博さんの新刊が届き、しかも、それがホンダの本であったため、つい読んでしまう。
    『ホンダ式―高収益・自己実現の経営』(中部 博/東洋経済新報社/1,500円+税)は、レース者の中部さんが、ビジネス書に踏み込んだ記念すべき1冊。とはいえ、もちろんホンダのレースについても書かれていて、ホンダが第3期F1挑戦においてBARと組んだのは、弱いチームと組んで勝つことに意義があるから――という理由からとか。なるほど、その意気や良し! 来年は絶対に優勝してくれ! この本でもホンダの独自技術へのこだわりが紹介されているのだが、そうなんですよ、だからこそ、来年からのIRLへの参戦が、いくら時間がなかったからとはいえ、イルモアとのタイアップってのは、ちょっとなあ……。アメリカのレースファンは気にしなくても、日本のファンは気にすると思うなあ、やっぱし。

    11月14日(木) 引き籠もり中

     仕事に追われ、外出しているヒマもなし。家に籠もって仕事に専念。

    11月15日(金) 気分転換に回転寿司

     籠もりっぱなしで、しかも、耳の炎症のおかげでプールにも行けずで、どうも気分が鬱々としてくる。というわけで気分転換のため夕食は家族と一緒に回転寿司。すべて1皿100円の郊外レストラン風の回転寿司店に出かけ、満腹になるまで食べてやった。

    11月16日(土) 運動不足解消のため

     とうとうコタツを設営し、ここで寝起きしながら仕事に専念。あまりにも動かないせいで腰が痛くなり、夜中になって40分ほど近所をウォーキング。汗をかいて帰宅し、そのまま風呂に入るが、そのあと朝まで仕事をつづけたら、なんだか湯冷めして風邪を引いたみたい……。

    11月17日(日) 夕方4時まで寝る

     昼前、玄関のチャイムの音で起床。家族がいなかったため、眠い目をこすりながら出てみると、下水掃除のセールス。屋根、外壁など、こんな飛び込み営業が多いのは、やはり不況のせいか。もちろん断り、そのまま仕事を……と思ったが、頭が重く、喉が痛い。やっぱり風邪のようだ。というわけで、もういちど布団に潜り、意地になって寝る。午後4時前に起床したら、だいぶラクになっていた。そのままケーブルテレビで全日本GT選手権の最終戦を見る。
     レースは残り2周ほど。GT500クラスは最終ラップまで激しいバトルが展開されていた。GT300クラスで優勝したのは青木孝行選手の乗るダイシン・シルビア。昨年のチャンプも、今年は1勝しかできなかったが、青木選手は今年、S耐のクラス1でチャンピオンを獲得している。青木選手とはニフティ仲間。GT300のチャンピオンになったのは高木真一選手の乗るA’PEX−MRS。かつて、F1レース小説『龍の伝説』を書いたとき、イギリスに出かけて、あちらでフォーミュラ・フォードに乗っていた高木選手に取材したこともあっただけに、いやあ、実に喜ばしい。テレビにはチーム監督の長谷川勇A’PEX社長も登場。しばらく会っていないが元気そうで何より(長谷川社長は高校の同級生)。
     テレビを見ていると仕事にならないので、即座にコタツで仕事を開始。あとは、ただ原稿執筆。深夜、楠木誠一郎さんのホームページの更新をするが、ついでに日録更新用プログラムを少しイジって完全自動化する。日記のテキストファイルを自動的にHTMLファイルに変換し、さらにトップページやメニューページの書き換えも自動的に実行させようという魂胆だったのだが、バグがあって、かえって時間がかかってしまう。しかし、これで来週からは、アイコンのダブルクリックだけで、4つのHTMLファイルの更新、1つのHTMLファイルの新規作成が可能になるはずだ。ちなみに、このプログラム、ActiveBasicというフリーのBASIC言語を使ってBASICで書き、これをコンパイルして実行ファイルにしたもの。こんな忙しいときにプログラミングに手を出すなんて、現実逃避に決まっている。そそくさと仕事に戻ろう。クスン。

    11月18日(月) しし座流星群

     終日、コタツに座り込んで原稿。しし座流星群が見られるというので、あらかじめ天文ソフトのStella Theater Proで、しし座の位置を確認。明け方、しし座が見えるはずの東方の空に目を向けるが、練馬の端っこの我が家から東を向くと、都心が明るくて、星空が見えず。背中には満月も出ているし、真上方向の星しか見えなかった。しつこく目をこらしていたら寒気が……ハクション。

    11月19日(火) 風邪かな?

     起きたら喉が痛い、腹が痛い、膝が痛い。どうやら風邪らしい。タイツを履いてコタツに籠もり、今日も終日、原稿。食事は1回だけ。
     寝る前に布団の中で読んでいた『御庭番秘聞』(小松重男/新潮文庫/絶版(;_;))読了。地味ではあるが史料に裏打ちされた御庭番の実相がわかり、実に面白い。『元禄御畳奉行の日記――尾張藩士の見た浮世』(神坂次郎/中公新書 (740)/480円)のような本が好きな方にお薦めかも。
     作者の小松氏は、『旗本の経済学―御庭番川村修富の手留帳』(郁朋社/1,500円)という史料を発見したことが、『御庭番秘聞』と『秘伝 陰の御庭番』(『御庭番秘聞外伝』改題/新潮文庫/絶版(;_;))というフィクションを生み、『御庭番の経済学』(ケイエスエス/1,600円)『御庭番の明治維新』(毎日新聞社/1,500円)といった歴史読物を書かせることになったとか。こんな「メシのタネ」になる史資料を発見したいものだが、家に引き籠もっていては、それも無理というものだ。もっとも、いつかネタにと思って秘匿している史資料は、それなりに持っているのだが……。
     しかし、この作者の『ずっこけ侍』『やっとこ侍』といった新潮文庫の作品は、ほとんどが絶版になってるぞ。光文社文庫、廣済堂文庫で復刊されているようだが、しかしなあ……。

    11月20日(水) 散発&水泳&阿刀田高

     伸びた髪が目の前に落ち、うるさくてたまらないので部屋のなかでも帽子をかぶって仕事をしていたが、これでもイライラするので思いきって理髪店へ。短くしてもらってサッパリ。いちど帰宅して仕事を進めた後、プールへ。コタツで仕事をしているせいもあってか、腰痛、膝痛がひどくなってきたので、耳の炎症も治りかけてきたし……というわけで、水泳800メートル、ウォーキングは通常の2倍の1000メートル。
     プールの帰途、書店に寄り、資料用の旅行ガイドと『短編小説のレシピ』(阿刀田高/集英社新書/700円)などを購入。
    『短篇小説のレシピ』は、新聞広告で見て目をつけていたもの。仕事があるので、まだ1/3ほどしか読んでないが、第1章でスタインベックのガムを主人公にした短篇小説を紹介し、ガムを主人公にした長編など読む気になれないと述べたあと、

    「人間以外のものを主人公にした小説はけっしてまれではない。犬、猫などの動物。論より証拠、日本の近代文学には猫を主人公にした名作がある。植物の主人公も、ないではない。生きものなら擬人化がしやすく、人類の別種とさえ見ることができるからよいけれど、ガムだの、机だの、雲だのが主人公になると、相当特別な小説になることは疑いない。そうであればこそ短篇のほうが冗長を避け、アイロニーが効いてよいのではあるまいか。」
     と書かれているのだが、うーん……「机」まで出てきて、その上に置かれるモノたちが主人公となる、ほら、あの長編小説があるじゃないですか。もっとも、面白かったかどうか、理解できたかどうかとなると、ちょっと心許ないところもあるのですが……。あれ、この作品、オンライン書店で検索しても該当なしだ。新潮文庫になっていたはずなのに。あの絶筆事件のときに絶版になってしまったのかな?
     ちなみに『短篇小説のレシピ』の上記引用部分直後に「家畜人ヤフー」という固有名詞が出てきますが、これは当然、『家畜人ヤプー』〈第1巻〉(幻冬舎アウトロー文庫/全5巻)の誤りですよねえ? 「時任謙作、スカーレット・オハラ」につづいているんですから。しかし、「家畜人Yahoo!」とは、なんとまた今風な誤植だこと。ちなみに、この小説、師匠の石ノ森章太郎先生がマンガ化したことがありますが、その後、石ノ森先生のアシスタントだったシュガー佐藤君もマンガ化し、さらに最近、江川達也氏もマンガ化に取り組んでいるとか。
     阿刀田高氏の作品は、氏が専業作家になる以前に書かれた『ブラックユーモア入門』『詭弁の話術』『恐怖夜話』といったKKベストセラーズの「ワニの本」時代からのファンで、作家になってからの『冷蔵庫より愛をこめて』『来訪者』『ナポレオン狂』(講談社文庫/1982年7月初版/514円)といった短篇集以来、大半の作品を読んでいる(最近は主に文庫の短編集)。
     小説やショートショートだけでなく、博覧強記のエッセイも面白いものが多く、書店で見かけると、つい手を伸ばしてしまう。
    『短篇小説のレシピ』以外の小説の読み方、書き方の本も多いが、小説家志望の人には、以下のような阿刀田作品をお勧めする。阿刀田氏の読み巧者ぶりだけでなく、それを「わかりやすく」紹介する手腕は、まさに職人芸。
    『ミステリーのおきて102条』(角川文庫/629円)
    『アイデアを捜せ』(文春文庫/1990年2月刊/448円)
     このような入門書を読むときは、紹介されている作品も読むことが大事。入門書だけ読んで、わかった気になっている人が多いので、念のため。
    『ミステリーのおきて102条』は、読売新聞日曜版に連載された短いエッセイをまとめたものですが、連載当時、このエッセイで提出された推理数学パズルを必死になって解いたこともありました。その名残が、ここここに。

    日記一覧に戻る