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  • 2002年10月下旬の日記

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    10月21日(月) 新宿まで取材

     本当は昨日のうちに取材したかった新宿某所を今日になって取材。西武新宿線、都営地下鉄大江戸線を乗り継いで新宿副都心まで。取材場所は雨が降っているためデジカメでの撮影だけでは不安なので、絵ハガキやパンフレットを集めて資料とする。45階の展望台にもエレベーターで昇り(地上202メートルまで所要時間55秒)、周囲の情景をデジカメで撮影。
     その後、パソコンショップ数軒をまわる。古いゲームソフトを探しているのだが、パソコンショップにあるのは新しいソフトばかり。中古ゲーム店の中古ゲームソフトは、ほとんどがプレステなどのゲーム機用ばかり。Windows用のゲームソフトもあることはあったが、大半はアニメ系のアダルトゲーム。こういうゲームが受けるのかあ……と、しばしタメ息をつく。
     目的のゲームが見つからないので、パソコンショップでMOとデジカメのケースを購入。溜まっていたポイントを使ったため、支払額はゼロだった。
     新宿に向かう電車の車中で著者から贈っていただいた『F1 影の支配者――ホンダ・トヨタは勝てるのか』(檜垣和夫/講談社+α新書/880円+税)を読んでしまったため、帰りの車中で読むための本を求めて書店へ行き、『本田宗一郎が教えてくれた――真の人生・仕事の王道とは』(梶原一明/PHP文庫/629円+税)を購入。
     すでに午後7時を過ぎていたので、夕食がわりにと高円寺「ノラや」に立ち寄ると、今日は若手落語家、鈴々舎わか馬さんの勉強会の日。すでにマクラがはじまっていたが、席に招かれ2席を聞いてしまう。その後、ビールを少し呑んで帰宅。吉祥寺からバスに乗り、混んだ車中で『本田宗一郎が教えてくれた』を読んでいたら、うっかりして2停留所も乗り過ごしてしまった。しかたなしに、そこから徒歩で帰宅。おかげで今日の万歩計の数字は12,000を超えていた。
     バス停を乗り過ごすほど熱中して読んだ『本田宗一郎が教えてくれた』なのに、よく考えたら、これ、講談社文庫で出たときに読んでいた。題名が変わっていたうえに、第1章が書き加えられていたため、いちど読んだ本とは気づかずに読んでいたのだが、とりあえず本田宗一郎氏に関する本なら基本的に購入することにしているので問題はない。すでに何十冊も読んでいるため、『本田宗一郎が教えてくれた』に書かれているエピソードも、ほとんどが知っていることばかりなのだが、それでも面白いのが本田宗一郎という人物とホンダという企業なのだ。
    『F1 影の支配者』は、F1を動かす巨大な資金と利権について書かれているが、長年、F1を追いかけている者の立場からすると、やはり知っていることが大半。初心者には面白く読めるだろうが、もう少しスレた長年のF1ファン向けには、もう少しヤバイ部分まで突っ込んで欲しかった気もする。でも、名誉毀損などの問題も出かねないからなあ。そうか! そういう闇の部分は、自分でフィクションの形で発表すればいいんだ!(笑) とりあえず執筆中のレース小説が終わったらプロットを立てることにしよう。

    10月22日(火) マンガのネームに突入

    『蒼天の艦隊』(1)
     昨日の取材を元に、さらにアイデアを煮詰めていると有楽出版社のMさんから電話。『灼熱の艦隊』第1巻の見本ができたとのことで、夕方、最寄り駅ちかくの喫茶店まで届けてくれることになった。そこで早めに待ち合わせの喫茶店に出かけ、マンガのネームを入れながらMさんを待つ。
     1時間ほどでMさんが到着し、見本を受け取る。装丁がこれまでよりも派手になっている。書店に並んでも、かなり目立つかも。Mさんは、すでに次回作のタイトルを考えてくれていた。いいタイトルなので、使わせてもらうことにしたが、実際の執筆は見本をもらった『灼熱の艦隊』全3巻が終わった後だから、来年の5月くらいになる。

     Mさんと別れた後、別の喫茶店に入って、またネーム。その途中で、またもや、そうだ! と新たなアイデアがひらめき、急きょストーリーを変更する。こういうノリが出てきたときは、調子が出てきた証拠。悪ノリであっても流れに身をまかせた方が面白い作品になるのは間違いない。せっかく入れたネームを10ページほど破り、途中からやり直し。

     暗い喫茶店でネームを入れていたら、目が疲れてネームが霞んできたので、プールに出かけて気分転換。打ち合わせやネームを入れに出かけるのに、水着やゴーグルまで持参しているのが用意周到というか確信犯というか……。水泳1,100メートル、ウォーキング700メートルをこなして帰宅。途中、携帯にマンガの編集者から着信があったのに気づいて折り返し電話をかける。歩きながら打ち合わせをし、帰宅後、ホームページの更新など。

     家のパソコンでメールをチェックすると、先週、マンガの原稿を送った某パソコン雑誌復刻版の編集者から、この雑誌が復刻されることになったこと、その原因となった昔のパソコンのエミュレーターのことが、先週末、有明ビッグサイトで開催されたWPC EXPO 2002で公開されていたとのことで、こちらのホームページに関連情報を掲載してもいいとの許可が出る。

     このエミュレーター、マンガを描くためにテストさせてもらったが、いやあ、実に楽しめました。おかげで原稿が遅れてしまったけれど……。

    10月23日(水) あっしには関わりのねえことでござんす

     笹沢左保氏が亡くなった。ミステリーを集中的に読みはじめた1970年頃、『招かれざる客』『人喰い』『六本木心中』といった作品に出会い、かなり熱中して読んでいたが、それらを上まわる面白さだったのが1970年に「小説現代」に発表されたニュー股旅小説『見返り峠の落日』『中山峠に地獄を見た』だった(いずれも「少年マガジン」で上村一夫氏の筆によってマンガ化された)。その直後、同じ「小説現代」に発表されたのが『木枯し紋次郎』だった。当時、「小説現代」では、読者アンケートによる人気投票をおこなっていて、『木枯し紋次郎』や『仕掛人・藤枝梅安』(池波正太郎)がトップを争っていた。五木寛之、野坂昭如、井上ひさし……といった作家が時代のスターでもあった頃で、中間小説雑誌の黄金期でもあった。
    『木枯し紋次郎』の真骨頂は、間引きされそこなって生きることになったというニヒルな主人公の造形のほか、誇りにまみれてゴワゴワにこわばった道中合羽は、ヤクザの使っているようなナマクラ刀(長ドス)では斬ることができず、喧嘩の際には殴り殺す……といった「リアル」な剣戟シーンにも、かなりのショックを受けたものだ。このような描写が、市川昆監督のテレビ版『木枯し紋次郎』にも引きずられていったのはまちがいない。
    『紋次郎』は、「小説現代」の発売を待ちかねては読んでいた作品だけに、残念な気持ちが強い。合掌。

     あとは終日、マンガの仕事。気がついたら朝だった。

    10月24日(木) 資料チェック

     終日、マンガの仕事。途中、プールで水泳。腰痛がぶり返しているので、水泳よりも水中ウォーキングを念入りにやる。帰宅後、またマンガの仕事。

    10月25日(金) 石森プロへ

     睡眠3時間で午前8時半に起床。午前9時45分、某社女性編集者と新宿駅南口で待ち合わせ、徒歩で石森プロへ。石森プロに行くのは10数年ぶり。しかも前回訪問したときは、クルマで行ったため、道に迷って苦労した。しかし、今日は徒歩だったせいで、あらかじめFAXで送ってもらってあった地図も見ることなく、入り組んだ狭い道をたどって石森プロに到着できた。ぼくが石森プロで仕事していたのは1972年頃のこと。30年前とあっては周囲の風景も一変していたが、それでも通い慣れた道はそのままで、すんなりと石森プロに到着できた。
     石森プロ訪問の目的は、某社から発売予定の単行本で、石ノ森章太郎先生の作品について解説原稿を書くことになり、その取材のため。取材相手は、石ノ森先生の長男の小野寺丈君。俳優としても活躍している丈君は、芝居の稽古が忙しいそうだったが、無理に時間を割いてもらい、あれこれと話を聞く。石森プロ出身のマンガ家でもあるぼくがライターを担当することもあって、インタビューではオフレコ話も含む出血大サービスをしてもらったが、文章の文字数を考えると、とても全部が入りそうにないのが残念。

     帰途、編集者と新宿西口で昼食をとったあと、紀伊國屋書店で新刊数冊を買って帰宅。電車の中と帰宅後に読了したのは『テレビの黄金時代』(小林信彦/文藝春秋/1,857円+税)。同名の著書があったはずだが、これは「文藝春秋」の連載をまとめたものらしい。小林氏の著作は、ほとんど読んでいることもあって、前に読んだことがあるようなエピソードが多かった。文中に『逃亡者』のパロディの話が出てくるのだが、ぼくは、いまだに『逃亡者』のナレーションを憶えている。暗記してから40年近くは経っているはずで、ふと思い立って「Google」で検索してみたら、ああ、やっぱり、同じように、このナレーションを憶えている人はいるんですね〜。どんなナレーションかは、Googleの検索結果をご覧ください。

     石森プロで丈君にもチラリと話したのだが、「ギャグマンガ」という用語は、石ノ森章太郎先生の『マンガ家入門』以前は、一般には使われていなかった。それ以前のギャグマンガは、「お笑いマンガ」「こっけいマンガ」「ユーモアまんが」「わははマンガ」といった扱いだったのだ。一種の「業界用語」であったはずの「ギャグ」を、1960年代に「パロディ」という言葉とともに「ヒッチコック・マガジン」などで広めたのが、中原弓彦の筆名も持っていた小林信彦氏だったはずだ。「スラップスティック」というギャグのジャンルについても触れているが、石ノ森章太郎先生がスラップスティック・ギャグを意識した『テレビ小僧テレスケ』(集英社「日の丸」連載)なども、「ヒッチコック・マガジン」あたりの影響が強いはずで、この雑誌や小林信彦(中原弓彦)氏の活動が、「SFマガジン」や「ミステリマガジン」などと併せ、トキワ荘グループの「基礎教養」だったのではないかと、ぼくは考えている。

    『マンガ家入門』の翌年(1966年)に出版された『シェーの自叙伝』(赤塚不二夫/華書房)という本では、『おそ松くん』でO・ヘンリーの『最後の一葉』がパロディ化された作品が紹介され、そのような「もじり」を「パロディ」ということが紹介されていた。この本では、「パロディの定義については「中原弓彦氏におまかせして……」と逃げていたが、このとき中学3年生だったぼくは、趣味性の強い雑誌としては「ボーイズライフ」や「丸」「航空ファン」「航空情報」あたりを読むのが精いっぱいだった(ほかにマンガ雑誌や貸本劇画もあった)。そもそも「ヒッチコック・マガジン」は、静岡県富士市の書店には回ってきていなかったのではないか。もしかすると見逃していただけかもしれないが。

     それはともかく、小林信彦氏は、日本のマンガ界にも多大なる影響を与えていたはずである……というのが、ぼくの持論となっている。

     睡眠不足で夕方、少し、昼寝して、夜、またマンガの仕事。寝不足で頭の働きが悪い。

    10月26日(土) 『ダーク・ブルー』と『「超」文章法』

     起床後、家でマンガの仕事を進めた後、夕方、銀座シネスイッチまで足を伸ばし、今日が公開初日の『ダーク・ブルー』を観る。スタジオ・ジブリと日本テレビ、博報堂が提供するチェコの航空戦記映画。第二次世界大戦直前、ナチス・ドイツによって併合されたチェコ・スロバキアから脱出した空軍のパイロットたちは、イギリス空軍に志願兵として加わり、英本土上空航空戦(バトル・オブ・ブリトン)に参戦する。戦後、チェコ・スロバキアに戻った彼らは、共産主義国家となった祖国で投獄される。自由主義のために戦う勢力となることを恐れられたのだ。
     映画は、投獄されたパイロットの回想録のかたちをとり、投獄中の悲惨な現状と、ドイツ空軍との戦いはあるが、戦後の祖国とは対照的な自由もあれば恋もある青春の日々をカットバックで描く。スピットファイアーとメッサーシュミットの空中戦もたびたび出てくるが、情緒過多の描写もなく、実にあっさりと、そしてあっけなく描かれている。それがまたリアルなのだ。戦争映画というと特撮ばかりが強調されるものが多い昨今、実に、淡々としてはいるけれど、実にいいものを見せていただきました。ユーゴスラビアのパルチザン映画を見終わった後のような感じではありました。このところ映画館で観る映画は、戦争ものばかりだなあ。

     往復の電車の中では、昨日、紀伊國屋書店で購入した『「超」文章法――伝えたいことをどう書くか』(野口悠紀雄/中公新書/780円+税)を読了。とりたてて目新しいことは書かれていないが、この本も、おそらくベストセラーになることだろう。それにつけても、これくらい自信と確信にあふれた文章を書いてみたいものだ。

    10月27日(日) 仕事に専念

     マンガの仕事に専念しています。でもネームが気に入らない。ノリが悪いのでネーム用の筆記具を、昔、ネームを入れるときに使っていたボールペンテルにしたが、え、こんなに線が太かったっけ? 書き直しも多いので、結局、消しゴムで消せるボールペンに変更。

    10月28日(月) 仕事に専念

     喫茶店に出かけてネーム。アイデアはできているのに、なんで、こうノリが悪いんだろう? 理詰めで考える小説の作り方に頭と身体が慣れてしまっていて、ノリで追い込むマンガの勘を取りもどすのに苦労している感じ。モヤモヤしながら帰宅し、手近にあった『四十七人の刺客』(池宮彰一郎/新潮社)を開いたら、もう3度目なのに、またもや一気読み。

    10月29日(火) 仕事に専念

     夕方、歯医者。その後、ファミリーレストランに出かけてネームを入れるも、どうも気に入らない。頭に来て半分ほど捨てる。新刊書店、古書店をまわり、書棚をながめて歩く。その後、再びファミレスに入り、新刊書店で購入した『人は地上にあり』(出久根達郎/文春文庫/590円+税/2002年9月刊)を読む。本に関する短篇のエッセイを集めたものだが、この作者のエッセイは、どれも面白く、はずしたことがない。
     帰宅後、編集者と電話で打ち合わせ。いよいよ時間がなくなってきた。

    10月30日(水) 仕事に専念

     某社に旧作マンガの原稿を送る。その後、マンガのネームのつづき。しかし、こんなに時間がかかってはダメだ。いちど、全部捨てたほうがいいかも……。迷いの元はわかっている。シチュエーション・コメディにしたいのだが、それがいまの読者や編集者に理解してもらえるかどうか、まるで確信が持てないから。シチュエーション・コメディとは、設定のおかしさの妙やキャラクターの異常性のおかしさで読ませたり見せたりするコメディで、昔、東京12チャンネルで放映していた『ソープ』という昼メロを茶化したアメリカのドラマが傑作だった(シチュエーション・コメディのパロディでもあった)。日本の小説でいえば、赤川次郎さんの奥さんが刑事でダンナが泥棒のシリーズとか『暇つぶしの殺人』とか……。最近でいえば太田忠司さんの『3LDK要塞 山崎家』とか『建売秘密基地 中島家』(ともに幻冬舎文庫)とか……。芝居でいえば三谷幸喜か(といっても映画になった『ラヂオの時間』くらいしか見てないけど)。しかし、こんなに仕事が進まず、イジイジしているのも珍しいぞ、嗚呼……。

    【NEW】 (Last modified:2002/11/04 02h31)

    10月31日(木) 本の買い出し

     仕事の資料が必要になり、地元の書店を覗いたが、すぐに必要な本が見つからず、すぐには必要にならない資料本を購入。しかたがないので西武新宿線で新宿に向かい、紀伊國屋書店の本店へ。なんとか役に立ちそうな本を見つけ、その他の資料になりそうな本も購入。そば屋に入ってトロロそばを食べつつ資料本を速読。帰途の電車、最寄り駅ちかくのハンバーガー店で、必死に読書。資料は必要な箇所の拾い読みといった感じ。本日、読んだ本は以下のとおり。

    『カジノが日本にできるとき―「大人社会」の経済学』(谷岡一郎/PHP新書216/700円+税)
    『世界カジノぎりぎり漫遊記―ギャンブル記者、夢の宮殿を巡る』(黒野十一/平凡社新書/740円+税』
    『戦後野球マンガ史―手塚治虫のいない風景』(米沢嘉博/平凡社新書/740円+税)
    『ウルトラマン対仮面ライダー』(池田憲章+高橋信之/文春文庫PLUS/676円+税)
    『仮面ライダー大研究』(TARKUS編/二見WAi-WAi文庫/495円+税)

    『戦後野球マンガ史』『カジノが日本にできるとき』は通読。『戦後野球マンガ史』は懐かしかった。この本でも触れられている『キャプテン』『プレイボール』(ちばあきお)の世界は文字だけでも表現できるぞ。

     ほらね。そう、谷口クンたちの練習風景です。

     他に購入した本。
    『巨人機物語―知られざる日本の空中要塞』(秋本実/光人社NF文庫/743円+税)
    『戦時用語の基礎知識―戦前・戦中ものしり大百科』(北村恒信/光人社NF文庫/800円+税)
    『戦略爆撃の思想(上)―ゲルニカ−重慶−広島への軌跡』(前田哲男/社会思想社・現代教養文庫/1,068円+税)
    『戦争映画館』(瀬戸川宗太/社会思想社・現代教養文庫/640円+税)
    『日本のアクション映画―裕次郎から雷蔵まで』(西脇英夫/社会思想社・現代教養文庫/816円+税)
    『カルト映画館*SF』(永田よしのり編/社会思想社・現代教養文庫/583円+税)
    『カルト映画館*アクション』(永田よしのり編/社会思想社・現代教養文庫/880円+税)
    『カルト映画館*ミステリー&サスペンス』(永田よしのり編/社会思想社・現代教養文庫/880円+税)
     現代教養文庫が多いのは、今年、発行元の社会思想社が倒産したため、いまのうちに店頭にあるものを入手しておかないと、今後、入手難になる可能性が高いから。ネット書店でも、すでに取り扱い不可になっているのだが、紀伊國屋やジュンク堂では店頭在庫の販売をつづけている。ジュンク堂では現代教養文庫の専用棚まで設けていた。『戦略爆撃の思想』の下巻もどこかで探さないと……。


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