SCI−FIって何だ?
SCI−FI の読み方は
サイファイ? それとも スキッフィー?

Sci-Fiに関する素朴な疑問

はじめに





↑書棚の奥から引っぱり出した懐かしのSF小説。
 最近、インターネットのあちこちで話題の「Sci-Fi」について、「Sci-Fiって何だろう?」と素朴な疑問を抱いたら、夜も眠れなくなって、つい、あちゃこちゃと語源なんぞを探してまわってしまいました。

 マイクロソフト&小学館のCD-ROM辞書「ブックシェルフ」を引いても、オンラインでアメリカの百科事典を引いてみても、「Sci-Fi」は「Science Fictionの略」とあるだけで、それ以上のことはわかりません。

 で、「Webster」の英英辞典(オンライン版)で調べてみると「Sci-Fi」は「1955年初出」の語だとのこと。

 ほかにコンピュサーブに「Sci-Fiフォーラム」があったことを思い出し、早速コンピュサーブにアクセス。ところが「GO Sci-Fi」と入れても、ありゃりゃ反応してくれない。

 昔(10年以上前)には、これで行けたはずなのに……と「FIND」機能で「FIND Sci-Fi」と入れて検索したら、かつての「Sci-Fiフォーラム」は「SF/Fantasyフォーラム」と名前を変え、「SF/F Lit(erature)フォーラム」「SF/F Mediaフォーラム」などに分化していたのが発見されたのでありました。

 考えてみるとコンピュサーブの「Sci-Fiフォーラム」には10年以上アクセスしておらず、その間に「GOコマンド」なども変わったようなのでありますが、ここで「どうしてSci-FiでなくSF/Fantasyになってしまったんだろう?」と、こんどはアメリカのSF事情について素朴な疑問を抱いてしまいました。

 ちょっと忙しかったので疑問を抱いたまま数日が経過したのですが、どうも気になることがあると夜も寝られない「性格が春日三球」(地下鉄の電車がどこから入ったか考えると夜も寝られない漫才師)なヤツなもので、仕事の合間を縫ってコンピュサーブの「SF/Fantasy Litフォーラム」で「Sci-Fi」をキーワードに使って検索してみたら、なぜフォーラムの名前に「Sci-Fi」を使わなくなったのかについて、フォーラム内で議論されたときログが残っておりました。

 そのログファイルの名前は「SKIFFY.TXT」。この中に、アメリカ(とイギリス)のSFの歴史の概要、そして「Sci-Fi」についてのいわれについても説明されておりました。90年12月に登録され、他のファイルは容量の関係で消されているのに、いまだに冷凍保存(?)状態で残されていたファイルです。それだけ記念碑的価値があるということなのでしょう(実際に会議室で議論されたのは88年12月)。


 それによりますとアメリカでは、まだ「Science Fiction」という言葉がなかった1930年代、まず最初に「Amazing」という雑誌を出したHugo Gernsbackが「scientifiction (Scientific fiction (?)」という言葉を用い、略称として「stf.(ステフ)」を使いました。

 しかし、この言葉は定着せず、同じGernsbakは、次にスタートした別の雑誌で「Science Fiction」を使うようになりました。これが「SF(エスエフ、または、エセッフ)」という略語の始まりでもあるようです(このHugoさんの名前がヒューゴー賞になってるんでしょうか? このあたり詳しくないもので)。

 第二次世界大戦後、「Famous Monster Magazine」を編集していたフォーレスト(フォーリー)・J・アッカーマンという編集者が、ステレオの「Hi-Fi(ハイファイ)」の発音にヒントを得て「Sci-Fi(サイファイ)」という「Science Fiction」の略語を生み出しました。これがウェブスター辞典いうところの1955年なのでしょう。アッカーマン氏は、自分の車のナンバープレートも「Sci-Fi」にして、この言葉の普及につとめたようです。

 アッカーマン氏はファンジンの祖としても知られている人でして、日本ではマンガの主人公になったこともありますが(^_^;)、コンピュサーブ会員の説明によると「(もちろん本人は認めないが)クズSF映画(trashy sf movies)」の愛好者で、彼がこれらの映画に「Sci-Fi」の名前を冠したため、一般メディアは、ゴムのぬいぐるみが出てくるモンスター映画のようなものを総称して「Sci-Fi映画」と呼称するようになったのだとか。

「2001年宇宙の旅」から「スターウォーズ」までの期間の前後は、「Sci-Fi映画」といえば目玉の大きなグロテスクな宇宙人やロボットなどが出てくるホラー系、モンスター系映画の代名詞となっていた(いる)のだそうです。

 さらに60年代に入ると、出版業界の中で、モンスター映画に似た安っぽいSF小説を「Sci-Fi」と書いて「Skiffy(スキッフィー)」と呼称するようになったのだそうで、「サイファイ」と並行して「スキッフィー」もポピュラーな呼称となっていったようです。

「Sci-Fi(スキッフィー)」という呼称には、多分に侮蔑的なニュアンス、あるいは自嘲的な意味合いも含まれていたようで、ジョークの中には「SFファンの前でスキッフィーというときは、逃げ出す準備をしてからにしろ」というようなものまであるそうです。

SFと
Sci‐Fiの
歴史





SFの世界は
ややこしい




 このような経過を経たせいか、「Sci-Fi」には屈辱的、あるいは差別的なニュアンスがつきまとうようになり、SF作家の中には「Sci-Fi作家辞典」への掲載を断ったりする人も出てきたのだとか。

 そのためコンピュサーブの「Sci-Fiフォーラム」は、その名称を「SF/Fantasyフォーラム」に変更し、「GOコマンド」からも「GO Sci-Fi」が消えることになったとのこと(1990年頃のことらしい)。ここでいう「SF」とは、「Science Fiction」であり、また「Speculative Fiction」であり、ハインラインやクラークの伝統を引き継ぐ作家、作品を指しているようです。ちなみにニューウェーブやサイバーパンクの作家名は出ておりませんでした。

 ただし、ここで留意しないといけないのは、コンピュサーブは元もと料金が高かったこともあって会員の年齢層と地位も高く(これを称して「コンピュサーブの3高(c)Mitsuru Sugaya)」という)、大半のフォーラムではハンドルが使えないなど、保守的なオンラインサービスとしても知られているところです。

 ……てなことを書いていて、またコンピュサーブにアクセスしたら、最近までは使えなかった「GO Sci-Fi」が復活しておりました。「SF/Fantasy Forum」グループのメニューが出てきます。コンピュサーブもAOLが親会社になったことで、ポリシーを変更したのかな? それとも前に探したときにタイピングをミスしたのかな?

 しかし、このコンピュサーブの「Sci-Fi」に関する議論は、なんとなく「ハッカー」についての議論を思い浮かべてしまいました。はい、「ハッカーとクラッカーを一緒にするな」というアレでございます。ケーブルテレビにも「Sci-Fiチャンネル」という、24時間連続でSF系のテレビ映画などを放映しているテレビ局もあるくらいですから、すでにアメリカでは「Sci-Fi」という言葉は市民権を得ているといってもいいのでは……なんて思っちゃうんですよね。これも、「面白ければSFでもSci-Fiでもかまわない」というこだわりのなさからなんでしょうが。

 15年ほど昔、手塚治虫先生に、「最近、『ゲームセンターあらし』は、すっかりSFになってますねえ」と言われ、「げえっ! 手塚先生が『コロコロコミック』まで読んでるう!」とビックラこいたものでしたが、そのとき「スキッフィー」という言葉を知っていたら、「いえ、ぼくのマンガはスキッフィーです」と言えたのになあ。あのマンガで目指していたのは駄菓子屋マンガだったから。

すがやみつる(1999/3/20記:1999/8/2一部書き足し)

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