#138 2年目のイギリスF3


 イギリスF3。それは、まさにF1への登竜門だった。
 世界からF1を目指す若者が集まり、ライバルを押し退けてでも、栄光の座にステップアップしようと狙っている。ホイールをぶつけての押し出し、クラッシュなども当たり前だった。
 キミは、やっぱり日本人だった。闘争心が足りないのだ。押されたら押し返す。精神的にも優位に立たないと、とてもやっていけない世界だった。
 キミは、2年目のシーズン半ばで自信を喪失し、日本に帰ることにした。おそらく、イギリス帰りということで拾ってくれるチームもあるだろう。ヨーロッパと違って日本のF3は、それ自体が完結したカテゴリーとなっている。F3にも大きなスポンサーがつき、ドライバーが生活できてしまう。それに甘んじたら、先はない。しかし、その生活も楽でいいだろう……。
 そんなことを考えながら、キミは、ロンドン郊外のフラットを引き払った。

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