#137 3輪走行


 キミのマシンは3輪になってしまった。だが、エンジンは止まっていない。キミはマシンのノーズをチェッカーに向けた。
 星川のマシンはエンジンがストールし、動けなくなっていた。その後方から、3位だった大河が迫ってくる。
 キミは、3輪になったマシンを必死でコントロールした。
 スタンドから悲鳴が上がる。大河がキミに迫っていたからだ。
 チェッカーが振られた。
 そのチェッカーは、半車身の差で先にコントロールラインを通過したキミに振られたものだった。
 奇跡の逆転優勝だ!
 この年、キミは、F3000で4勝し、チャンピオンに輝いた。
 スポンサーの社長夫人も喜んで、キミにポルシェをプレゼントしてくれた。
 翌年からグループAとグループCのレースにも出るようになった。日本のレース界のトップスターとなり、キミは、それで満足だった。苦労してF1にいくよりも、日本のトップスターでいた方が、苦労も少なく楽でいい。キミは、社長夫人の寵愛を受けながら、伊豆の別荘で、海に沈む夕日をながめていた。

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