#92 フォーミュラVee


 キミは、オーバルコースも悪くないと思ってフォーミュラVeeに進むことにした。
 ところが時期が悪かった。フォルクスワーゲンが、レースへのサポートを打ち切ってしまい、エンジンも出なくなって、乗るマシンがなくなってしまったのだ。
 キミは失意のうちに、新しいチャンスがめぐってくるまで、草レースに出場することにした。アメリカでは、ちょっとした街の郊外には、必ずレース用のトラックがあって、週末の夜に、ざまざまなレースが行われていた。
 キミは、そこでいろいろなレースを経験した。やがて、その腕が認められ、日本人で初めてNASCARのウィンストンカップシリーズに出ることになった。アメ車を改造したストックカーのレースだ。
 キミは、そこで連戦連勝を重ね、ついにチャンピオンになった。ホワイトハウスにも招かれるほどの有名人となり、いつしかF1への夢も忘れていた。
 本当に速い者がヒーローになれる。F1のような政治力がモノを言う世界ではなかった。キミは、そこでアメリカン・ドリームを成し遂げたのだった。

  【END】Topへ