#89 夜の砂漠
キミは、星を頼りにトラックを進めた。やがて前方に、まばゆいばかりの光が見えてきた。
ゴールのラスベガスだった。
砂漠の中の人工都市。その中でもひときわ巨大なシーザース・パレス・ホテル。かつてはF1も走ったことがある駐車場がゴールだった。
ガス欠寸前だたどり着いたキミは、ストロボの光を浴びた。キミが優勝だったのだ。
ほかの選手は、竜巻に巻き込まれ、全員行方不明だという。唯一、生還してきたのがキミだったのだ。
キミは一躍、英雄になった。テレビや新聞にも奇跡のウィナーとして紹介された。
キミがレーシング・ドライバー志願だというと、いくつもの会社が、スポンサーの名乗りをあげてきた。それがチャンスの国アメリカだった。
大手ビールメーカーがキミのスポンサーになり、そのビールメーカーがスポンサーになっているインディカー・チームのテストを受けさせてもらえることになった。キミは、新品のレーシングスーツとヘルメットを抱えて、インディアナポリスに向かった。
1.続く