#87 小杉フォークリフトへ


 キミは、F3をやりながら、フォークリフトの講師をすることになった。
 レースの方は、さっぱりだった。古似倉は、趣味のパソコン通信に入れあげて、マシンの整備をさぼってばかりいたからだ。たまにガレージにいくと、コクピットでは、古似倉の買っている猫のトトロが、シートの上で子供を産んでいたりした。
 それでもキミは、さほど腹も立たなかった。フォークリフトの講師が面白かったからだ。
 生徒の中には、たくさんの東南アジアからの研修生がいた。そこで学んだ技術を国に帰って活かし、母国の経済発展に寄与しようと、皆、熱い眼差しに燃えていた。
 その若者たちから要請されて、キミは、東南アジアの国々で、フォークリフトや建設機器の技術を教えることになった。キミはもう、フォークリフトだけでなく、あらゆる建設機器のエキスパートになっていたのだ。
 キミはもう、F1チャンピオンへの夢を忘れていた。それ以上に素晴らしい世界を見つけたからだ。
 キミは、成田空港から、バングラディッシュに向けて飛び立ったのだった。

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