#59 スポンサーの話をことわった
キミは、せっかくの申し出をことわった。
それがケチのつきはじめだった。コツコツとアルバイトして貯めた金を頭金にして、中古のFJ1600を買ったが、初練習でクラッシュ、全損してしまった。
しかし、ローンは残っている。ローンの支払いのためにアルバイトを続けないといけない。少しでも給料のいい仕事をしようと、キミは深夜の地下鉄工事で働くことにした。
そのトンネル工事現場で、キミは落盤事故に遭った。手抜き工事が原因だった。
天井から降り注ぐ土砂が、キミの身体を埋めていく。
口にも、鼻にも砂が入ってきた。
「あのとき、スポンサーの申し出を受けていれば……」
後悔したが、もう遅かった。キミの意識は次第に遠くなっていった。
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