#45 風は鈴鹿へ
キミと姉は、鈴鹿市内にアパートを借りた。姉は、近くの工場に勤務し、キミは、FJを製作しているガレージでメカニックとして働くことになった。メカニックをしていれば、車のセットアップの知識も身につくと思ったからだ。
FJのガレージでは、同じような若者が何人も働いていた。1年間、メカニックとして働き、そこで貯めた金で、まず中古のFJを買ってレースに出る。そこで認められたものは、翌年、ワークスマシンを貸与されることになっていた。
定時制高校にも通い、同時に英会話のラジオ講座も欠かさず聞いた。英語ができなくては、海外のレースには出て行けないからだ。耳から英語を覚えるようにした。鈴鹿のレースで、メカニックの応援にかり出されたときは、極力、外国人ドライバーやメカニックと話すようにした。それがさらに英会話に磨きをかけた。
そうしているうちに、キミは、海外から遠征してきたチームのマネージャーから、イギリスで働く気はないかと尋ねられた。F3のチームでメカニックを探しているというのだ。そのマネージャーは、キミの機敏な働きぶりが気に入り、そのチームに推薦してくれるという。いまいるガレージと同じように、1年メカニックとして働けば、次の年、F3で走らせてくれる制度もあるという。
チャンスだ! こんな話は、そうあるものではない。キミの心は揺れ動いた。
1.イギリスへ渡る
2.まず鈴鹿でのデビューを目指す