#23 家族の絆


 姉も、母がギブスをつけるのを手伝った。二人の安物の香水の臭いが鼻をつく。
 そのとき、キミは見た。母と姉の目に涙が浮かんでいるのを。
 違う! 二人は、本心でないことを話している。ぼくのために無理してるんだ。ぼくをF1チャンピオンにするために、やりたくない仕事をしてしてるんだ。
「かあさん、姉さんッ!」
 キミは、母と姉の身体を抱きしめた。
 ガラッ! 
 いきなり部屋の戸が開いた。そこには家を出ていったはずの父が立っていた。
「見たぞ、見たぞ、見たぞ!」
 父は、酒に酔っていた。
「俺は、家を出たものの、行くあてもなくて、あちこちさまよい歩いていたのに……。
自分たちだけ綺麗な服を着て、化粧なんかしてヌクヌクしやがって」
 服もボロボロ、髪もボサボサの父が、いきなり、手にしていたポリタンクの中身を、きみたち3人に浴びせた。ガソリンだった。
「な、何をするのよ?」。母が声を張り上げた。
「決まってるじゃないか」
 父は、マッチに火をつけた。
 −−1時間後、キミたち一家は、焼死体で発見されたのだった。

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