#14 練習続行!
キミは脇腹の痛みをこらえて練習を続けた。しかし、痛みは、ますますひどくなる。
「どうしたんだ?」
苦痛にゆがむキミの顔を、ブッチギリの店長がのぞき込んだ。
「わ、脇腹が……。呼吸するのも苦しい……」
うめき声をあげながら、キミは答えた。
「すぐ病院へいこう。おそらく肋骨にひびが入ったんだ」
「あれくらいで?」
「カートを馬鹿にするな。シートがちゃんと合ってないだけで、肋骨にひびが入ったり、骨折することだってあるんだ。コーナリングのときの横Gで、脇腹がシートに打ち付けられるだけでな。サーキットで走ったら、マシンが小さい分だけ、コーナリングスピードは、レーシングカーよりも早いことがあるんだ」
店長の車で病院に運び込まれたキミは、早速、レントゲンを撮られた。店長の言うとおり、2本の肋骨にひびが入っていた。
脇腹をテープで固定され、キミは家で安静にしていなければならなくなった。もちろん家族が心配する。とくに母が、改めて、レースの恐ろしさに気付き、態度を豹変させた。
「こんなうちから怪我をしていたら、F1に乗るまでには何回も命をなくしてしまうわ」
母が、カートの中止命令を出した。もちろん父もだ。そして、キミも、脇腹の痛みに耐えかねて、F1への夢を断念したのだった。
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