#4 レース雑誌を買ってみた


 キミはパソコン通信をあきらめ、書店でレース雑誌を買うことにした。そこには、F1パイロットの多くが、レーシングカート出身であると書かれていた。しかもカートなら、自動車の運転免許のない中学生でもレースに出られる。セナも中嶋も鈴木亜久里も、みんなカートがレースの第一歩だった。
「これだ!」
 キミは胸を躍らせた。別のページには、カートショップの広告も載っていて、近所にカートショップがあることも発見した。しかも、本格的なサーキットは近くにはなかったが、カートコースが郊外にあることもわかった。
 ミニF1とも呼ばれるレーシングカート。これこそF1パイロットへのスタートだ。
 そう思ったキミは、早速、自転車に乗ってカートショップに出かけた。
 店の名は「ブッチギリ」といった。
「カートをやりたいんだったら、家族の協力がないと無理だな」
 髪もボサボサで、不精髭を生やした油まみれの主人が、不愛想な声で言った。「カートといっても遊園地の乗り物とは違うんだ。金もかかるし、事故で怪我をしたり死ぬことだってある」
 店の中に飾ってある初心者用のカートは、30万円以上した。中古でも15万円くらいするという。中学生のキミにとっては大金だ。キミは、トボトボと自転車を引きずって家路についた。

 1.続く