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  • 2002年06月下旬の日記

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    06月21日(金) ゲラの合間に『スパイダーマン』

    『蒼天の艦隊』(3)のゲラチェックは今日までと思っていたら、来週で間に合うらしい。そこで急きょカミサンと吉祥寺まで『スパイダーマン』を見に出かける。吉祥寺は今日が最終日だったもので。最近、映画を見に行くときはバス1本で行ける吉祥寺が多い。スクリーンの大きさを気にしなければ、あまり混まないし……。
     午後6時45分からの最終回だったが夕食をとっている暇がなかったので、ハンバーガーショップでハンバーガーを買って映画館へ。映画が始まるまでの間に食事をすませたが、どうも物足りなくてポップコーンを追加。こらだからダイエットも、すぐにリバウンドするんだよな。

     映画『スパイダーマン』は、原作に忠実(完全に忠実というわけではないが、基本的な設定は、ほぼ同じ)で、ナイーブな主人公の雰囲気もよく出ている。ヒロインのMJから見れば、典型的な少女マンガの展開(カッコイイ男or金持ちの男と恋に落ちるが、やはり身分や格の違いもあって恋は成就せず、悲嘆に暮れていると、そこには、子供の頃から見守っていてくれた幼なじみの彼がいた)だが、このような「お子さま映画」に、むずかしい展開を持ち込んだりする方がヤボというもの。これだけの予算をかけて「お子さま映画」を撮ってしまうハリウッドは、やはりスゴい。同じスタッフで『仮面ライダー』も撮ってくれい!

     ところで、ぼくが『仮面ライダー』でマンガ家デビューした直後、アクションシーンが描けなくて、さんざん参考にしたのが『スパイダーマン』だった。1971〜72年頃のことで、当初、石ノ森章太郎先生の『ライダー』を参考にしていたのだが、石ノ森先生の絵は、クロッキーのような流れる線の組み合わせで描かれていたために、真似するのが非常に困難で、とうとうギブアップ。別のお手本を探すことにして出かけたのが神保町の古書店街。駿河台下から少し神田寄りに歩いたところにあったブックブラザーで『スパイダーマン』をはじめとするアメコミの古雑誌を見つけ、「これだ、これだ!」と狂喜乱舞したのであった。

     当時、まだアメコミブームなどというものはなく、『スパイダーマン』や『シルバーサーファー』などのアメコミが1冊30円から50円くらい。やはりカッコイイのはDC系よりもマーベル系(DCは『スーパーマン』などで有名なマンガ専門出版社。マーベルは『スパイダーマン』などの出版社)で、わんさかと買いあさり、これを参考に『ライダー』を描いたのでありました。「テレビマガジン」の『仮面ライダーV3』あたりのカラー原稿では、色塗りもアメコミ調に。まだ珍しかったマーカーを多用して、どぎつい色調に塗ったものだった。
     アメコミは、ページが少ない関係で、コマも小さくなる。その小さいコマの中で、広大な景色や迫力あるアクションを見せるために多用されていたのが極端な遠近法(パース)を使った構図。ビルなどは、下からあおったり、上から見おろしたり。人物だった手前の手足が大きく、反対側は極端に小さくなる。このようなところは『鉄腕アトム』なども同様だったが、アメコミには絵に「影」もあって立体感が出るため、よりリアルになる。もっともこちらは基本的なデッサン力がないもので、アメコミ+アトムをミックスしたような遠近のついた絵になった。そして、このパースのついた絵柄は『ゲームセンターあらし』まで引き継がれていったわけである。

     ちなみに杉浦茂氏のマンガが原点の赤塚不二夫氏のマンガに出てくる「レレレのおじさん」の手をひっくり返すと『スパイダーマン』がクモの糸を発射するときのポーズになる。そして、それを天地逆にすると『あらし』が得意とするポーズになるのだ。

     そういえば、マーベルが日本の東映と提携してマーベル・ジャパンという日本支社をつくり、東映で国産『スパイダーマン』を製作してテレビ放映されたとき、「冒険王」に『スパイダーマン』を連載したのだが、内容は、ほとんど覚えていない。『怪傑ズバット』のことは、そこそこ覚えてるのになあ……。そうそう、石森プロのマネージャーKさんからマーベル・ジャパンの責任者(アメリカ人)を紹介され、そのご縁で『未知との遭遇』を「税関試写」という字幕も入っていない段階での試写で見せてもらう機会を得たのであった。このとき見ていたのは数人だけだったが、その中に、『スパイダーマン』を初めて日本に紹介した小野耕生氏もいらっしゃった。おそらく1978年のことで、この直後に『コロコロコミック』に描いたSFマンガに出てきたUFOは、シャンデリアをひっくり返したみたいな、まさに『未知との遭遇』型UFOだった。

     1978年にF1レースを見るためにカリフォルニアに行ったとき、ロサンゼルスのタワーレコードで『スパイダーマン』のLPを買ったり、1983年にはサンフランシスコで「マーベルコミックのマンガの描き方」という本を買ってきたり。マーベルには、お世話になってるなあ……。あ、LPは、ほとんど役に立たず、ただのコレクションアイテムになってますが。

     そういえば映画『スパイダーマン』のパンフレットでは、「Marvel」社の表記が「マーヴル」になってた。うーん、これ、「マーベル」か「マーヴェル」という表記のほうがいいんじゃないのかなあ? 日本人の耳では区別がつきにくいんだけど。

     映画の後は居酒屋で軽く食事をして、バスで帰宅。そのままゲラの残りに取りかかり、矛盾点などをチェック。午前6時に終了する。

    06月22日(土) うわああぁぁ、小説の挿絵の依頼が……

     昼前には起きて次の小説の原稿を読み直し。上下巻のうち、下巻の1/4くらいまで進んでいるのだが、しばらく執筆を中断しているため、ノリを取り戻すのに時間がかかりそう。

     午後3時15分からはフジテレビ721でF1ヨーロッパGPのフリー走行を見る。NHK総合のワールドカップ韓国対スペイン戦とチャンネルサーフィンしながらの観戦。しかし、睡眠が足りていないせいもあって、F1の排気音を聞いているうちに意識が薄れ、座椅子にもたれてグ〜。
     ハッと目を覚ますと韓国対スペインは0対0で延長。それでも点が入らず結局PK戦で韓国の勝ち。気迫勝ちといった感じでしょうか。

     韓国の勝利を見届けてスポーツクラブへ。水泳1200メートル+ウォーキング500メートルの後、クルマでファミリーレストランに回り、食事をしながら小説版『仮面ライダー』の読書。1971年の実際の年月日が書かれ、当時の事件なども出てくることから、つい、そちらが気になってしまってストーリーに没入できないのが困りもの。時代をあらわすガジェットのあれこれが、つい気になってしまうもので。ぼくは太平洋戦争を舞台にした架空戦記を書いているが、その時代に生きていた人が読んだら、その人の知っている時代と小説の描写とが印象がちがっていて、違和感を抱かれるのだろうなあ……。

     少し原稿も書いて帰宅すると、小松左京事務所のOさんから電話があったとのこと。深夜、再び電話をくださったのだが、用件は「小松左京マガジン」に掲載されるSF小説のイラストの注文。マンガ家に復帰したとはいえ、画力があるわけではないので固辞したが、結局、押し切られる。どんな絵で描くかは、明日届く原稿を読んでからにしよう。

     水泳に出かけてF1の予選中継を見なかったので、フジテレビの録画中継を見る。今日のF1の日程は、すべて45分前倒し。ワールドカップとテレビ放映時間が重ならないようにするための措置。F1もワールドカップにはかなわない。

    06月23日(日) 水泳のない日は「仮面ライダー」

     午後に起床すると「小松左京マガジン」からイラストを依頼された小説の原稿が届いている。即座に読むと面白い短編。絵のイメージは湧くのだが、そのイメージ通りに描く自信がないのが困る。とりあえず構図だけ決めたあと、読み残していた和智正喜さん小説『仮面ライダー―誕生1971―』を読了。1971年4月(つまり『仮面ライダー』の放映日)から始まる物語で、テレビでは藤岡弘の怪我で出番を失った仮面ライダー1号が、そのまま活躍をつづけるオリジナルストーリー。当時の出来事があれこれ出てくるもので、つい気になって読み進まなかったけれど、中盤からは一気呵成。ショッカーや幹部の設定など、「おお、こう来るかぁ」というような展開もあり、「ライダー」ファンならずも楽しめる展開になっているはず。プロローグが終わったという感じで続編が楽しみ。

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     夕食後、水泳に行くかわりに近所をウォーキング。30分ほど急ぎ足で歩いて汗をかく。帰宅後「利家とまつ」を見たあとは、もちろんフジテレビ721でF1ヨーロッパGP。でもスタートでジョーダンのフィジケラと佐藤琢磨がガッチャン。あーあ……。
     レースはフェラーリの2台がブッチギリで、最後の見どころは、先行していたルーベンス・バリチェッロにチームオーダーが出され、またも2位にされるのかどうか。しかし、オーストリアGPでのあからさまなチームオーダーに対しての批判の影響か、今回は、バリチェッロがペースを落としても、ミハエル・シューマッハーは抜くことはせず。

     深夜、楠木誠一郎さんのホームページを更新した後、小説の原稿に戻り、明け方まで執筆。

    06月24日(月) イラストはむずかしい

     午後に起床し、すぐさま小説の原稿。途中でプリントアウトの必要が生じたのだが、レーザープリンターのトナーが切れている。クルマで家電量販店にトナーを買いに行き、さらにディスカウントショップに寄ってプリンター用紙を購入。帰途、ファミリーレストランに寄ってパスタを食べながら小説の原稿を2時間ほど。

     帰宅後、「小松左京マガジン」のイラストを描きはじめるが、人物の絵がヘボで情けない。筆とペンを使って描いた絵をスキャナーでパソコンに取り込み、背景をパソコンで処理。これをメールで送信したら、すでに朝。晩酌をしていたら寝たのは午前9時。

    06月25日(火) こんどは「別冊宝島」の原稿だ

     午前11時、有楽出版社のMさんから電話で起き、カミサンにクルマで送ってもらって駅前の喫茶店へ。ここでMさんと待ち合わせ、『蒼天の艦隊』(3)のゲラ渡し。疑問点の突き合わせもすませてMさんと別れ、タクシーで帰宅。昼食をとると眠気に耐えきれなくなり、また布団へ。

     午後5時に再起床し、プール。水泳1000メートル、ウォーキング500メートル。そのままファミレスに寄って仕事をしようと思ったが、睡眠不足で眠気に襲われ、そそくさと帰宅。ワールドカップの韓国対ドイツ戦を見るが、今日の審判は、わりと公正で(?)、ドイツにもイエローを連発するが、結局、ドイツの勝利。うちのカミサンは、試合前に流れたドイツ国家を聞き、「あれ、これF1のテーマ曲じゃないの?」。F1のレース後の表彰式で、いつも流れている曲なもので、そう思っていたらしいのだが、違うって。ミハエル・シューマッハーが優勝したからドイツ国歌が流れてたんじゃないか。それだけ最近はドイツ国歌を聞く機会が多いってことだけど。ラルフも優勝しているし。

     なんてことを書いてるときではない。小説の原稿は一時中断し、すぐさま「別冊宝島」の原稿に取りかかる。

    06月26日(水) 予定どおりに進まない原稿

    「小松左京マガジン」のイラストも終わったので、つづいて「別冊宝島」の原稿に突入。すでに1ヶ月以上も前から資料を揃え、コンテも立てて準備を整えていたのに、いざ本番原稿に取りかかると、資料の量が不安になる。そのため新刊書店を数軒まわり、資料となる本を探すが、ない、ない、揃わない。都心の大型書店か神保町の専門書店に行けば揃うかもしれないが、その時間はない。しかたがないのでやむを得ず新古書店めぐり。半額くらいの値段で必要な資料がほぼ揃ってしまったが、その資料を元に原稿執筆という営業行為をすることを考えると、非常に忸怩たる思いがある。新刊書店で同じ本を見つけたら購入することにしよう。

     で、ファミリーレストランをハシゴしながら原稿。緊張を必要とする原稿なので、時間がかかるかかる。果たして明後日の締切までに終わるか? 400字詰め換算で37枚もあるし……。

    06月27日(木) 推理作家協会賞授賞式へ

     原稿の進みが悪いため、早起きしてノートパソコンに向かう。午後、新橋の第一ホテル東京で開催された日本推理作家協会賞の受賞式へ。少し早めに現地に到着し、ホテル近くの喫茶店でノートパソコンを広げ、ここでもパコパコ。その姿を某SF作家さんに見られていたらしく、あとでパーティー会場で冷やかされた。
     今年の推理作家協会賞は、長編及び連作短編集部門が山田正紀氏の『ミステリ・オペラ』&古川日出男氏の『アラビアの夜の種族』、短編部門が法月綸太郎氏の『都市伝説パズル』&光原百合氏の『十八の夏』。評論その他の部門は該当作品なし。昔、山田正紀研究会というファンクラブに入っていた前科のある者としては山田さんの受賞はメデタイ限りなのだが、でも最近すっかりミステリ作家になってしまって、SF作家だってことが忘れられている事態は少し寂しい。
     パーティーの後は、ちょっとだけ寄り道した後、喫茶店をハシゴして仕事しつつ吉祥寺から最終の深夜バスで帰宅。原稿は終わらず、さらに朝までキーボードを叩く。

    06月28日(金) ひたすら原稿を書くも……

     今日が締切なのに「別冊宝島」の原稿が終わらない。しかも眠くて能率が上がらない。午後、ついに座椅子にもたれて仮眠。その後、無理に目を覚ますためプールに出かけて水泳。1200メートル泳ぎ、500メートル歩いて体重を1.2キロ落とすが、帰途、ファミリーレストランに寄って食事をしながら原稿を書いたため、あっというまにリバウンド。帰宅後も朝までかかって原稿を書くが、まだ終わらず。

    06月29日(土) 居眠りばかりの1日……

     昼前に起きてコーヒーを飲んでいると英知出版から『ゲームセンターあらしA』が新連載された「トラマガ」が届く。久しぶりのストーリーマンガであるため、リハビリしながら描いたような感じもあるマンガなので反響が心配で心配でドギマギ。メールや掲示板で「読んだよ」の報告が寄せられる。ありがとうございます。
     しかし、締切が過ぎた原稿を抱えているため、次から次に届くメールの返事を書いていると仕事にならないので(メールを送ってくださった方、ごめんなさい。返事は、この原稿が終わったら、まとめて書かせていただきます)ファミリーレストランに逃げることにする。インターネットに接続することのないようPHSも持たず、ノートパソコンと資料をデイパックに詰め込み、クルマでファミレスへ。ところが土曜日の夕方で、ファミレスには、お客が次から次にやってくる。ノートパソコンを叩いていると白い眼で見られるため、早めに切り上げて他のファミレスに移動するが、こちらも満席。しかたがないので帰宅し、ワールドカップの3位決定戦を耳で聞きながら原稿のつづき。果たして今夜中に終わるか? 神経をつかう原稿で胃が痛くなる。

    06月30日(日) ふうふうしながら原稿

     とりたてて変化なし。ひたすら原稿を書くのみ。昨日、「トラマガ」が出たせいで『ゲームセンターあらしA』の感想が今日もメールで届く。再び、ありがとうございます。


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