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『原子力と報道』(中村政雄)

『原子力と報道』(中村政雄/中公新書クラレ/2004年11月刊/756円)........1980年代の終わり、反原発運動が真っ盛りの頃、ぼくは、電気事業連合会から依頼され、『コミック版 エネルギーを考える』というPRマンガを週刊誌に連載したことがある。そのとき、連載開始前に多くの専門家からレクチャーを受けたが、この本の著者の中村氏もレクチャー役を引き受けてくださったひとりで、その冷静な視点からの講義は、非常にわかりやすく、かつ納得できるものだった。
 中村氏は、すでに読売新聞社を退職されているらしいが、本書では、大手メディアの記者会依存体質の批判など、苦言を呈している。しかも、私費を投じて、公正な報道を求める活動もしているとのこと。最近のメディアのセンセーショナリズムに我慢がならないのだろう。
 ただ、最近の原発関連の事故の原因を見ていると、リコール隠しをした自動車メーカー、消費期限を誤魔化した乳製品メーカー……と同様の無責任体質が電力会社の中にも見受けられるようで、かつて電力会社のPRマンガを描いた身としては、相当に残念。1990年前後は、日本ほど、原発を動かす人たちのモラルが高い国はなかったのになあ……。
 反原発運動が最盛期を迎えていた頃に電力会社のPRマンガを描くことになったせいで、他の仕事が切られるのは覚悟のうえだったが、ふつうのマンガ家では行けないような原発の奥まで取材するという貴重な体験ができた。この経験は、この先、どこかで活かされるはずだ。

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