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今日、買った本:『マンガの深読み、大人読み』

マンガの深読み、大人読み
『マンガの深読み、大人読み』(夏目房之介/イーストプレス/2004年9月刊/1,355円)

 夏目房之介氏のマンガ評論書籍最新刊。ミーハーして、本日(10月1日)、神保町の三省堂本店で開催された著者サイン会にお邪魔し、サインをいただいてきました。
 1部「マンガ読みの快楽」では、1980年代後半からのマンガをまるで読んでいないことを再確認。『DRAGON BALL』も、ねこぢるも、浦沢直樹も、『クレヨンしんちゃん』(映画版アニメは感心して見ているが)も、さっぱりわからない。手塚治虫、永井豪、いしいひさいちあたりはわかるけど(敬称略)。
「永井豪 大ゴマ使いの形而上学」では70年代はじめの永井さんのマンガのコマ数の減少(大ゴマの増加)について触れているが、永井さんの作品でコマ数が極端に減りはじめたのは「少年ジャンプ」の『ハレンチ学園』あたりからではなかったか。本宮ひろ志さんの『男一匹ガキ大将』あたりも含め、基本のコマ割りを4段から3段に減らし、極端にコマ数を減らすようになっていた。
 1972年、田中角栄が首相に就任し、日本列島改造論ブームで諸物価の値上げやインフレがつづいていた頃で、マンガ雑誌も厚さで勝負するようになっていた頃だ。
「少年チャンピオン」のマンガも「ジャンプ」のあとを追って大ゴマ化していったが、この傾向にブレーキをかけたのが、あのオイルショック(1973年秋)だった。スーパーから粉石鹸やトイレットペーパーが消え、マンガ雑誌も1折(32ページ)ずつ薄くなり、連載マンガ1本あたりのページも減少した。その影響で3段が基本となっていたマンガのコマ割りも、4段がベースとなり、コマ数も増えることになった。3段がベースのときは、コマ数が少なく、ストーリーの進行が遅くなって、内容がスカスカになってきた……という批判が聞かれたりもした。ところがオイルショックのおかげでページが減ったせいか、どのマンガも密度が濃くなってしまったのだ。
 それまでの日本の繁栄が、安価な中東の石油の上に浮いていただけの“油上の楼閣”だったことが発覚し、マンガ雑誌がつぶれて失業するのではないか……と危機感を持つマンガ家や原作者も多かった。
 このときぼくも、「週刊少年チャンピオン」でつづいていた新人の連載枠で、原作つきながら10週連載をやらせてもらえることになっていた。第1回目の原作をもとに取材も進めていたのだが、いざネームにかかろうとしていたところで、「ページ数削減のため、新人枠がなくなることになった」との連絡が入り、週刊誌デビューはオジャン。恨み骨髄のオイルショックでもあっただけに、このあたりのことは、妙によく憶えている。
 夏目氏も、作品ごとのコマ数の変化をグラフにしていたが、1973年から74年にかけてのグラフを緻密にしたら(1本あたりのページ数の変遷も含め)、オイルショックの影響も見てとれたのではなかろうか。

 この本で面白かったのは、やはりなんといっても2部の「『あしたのジョー』&『巨人の星』徹底分析」。『巨人の星』の川崎のぼるさんが自作について、こんなに長く語ったのは、これが初めてではないのか。ちばてつやさんも生き生きとインタビューに応えているが、先日の石ノ森章太郎ファンクラブ会報「風のたより」での石ノ森章太郎師匠へのインタビューといい、夏目氏のインタビュアーぶりは最高。さらに編集者という縁の下の力持ちの人たちにも光を当て、インタビューしている点がいい。マンガの大半は、編集者の力なくしては生まれなかったはずでもあるからだ。

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